今月の特集:『パート・ド・ヴェール』作り方

今月はインタビューをお休みして、ガラスの作り方についてお話しします。
これから時々、少しずつガラスの技法をお知らせ出来たらな、と思っています。
今回は私が主に制作している『パート・ド・ヴェール』についてです。

パート・ド・ヴェール

パート・ド・ヴェールとは、フランス語で『ガラスの練り粉』と言う意味です。
ガラスの起源、メソポタミア時代から伝わる「幻の技法」とも言われています。
パート・ド・ヴェールは行程が多く、作業時間もかかる為、量産出来る吹きガラスの登場とともに衰退しました。
その後、19世紀末のフランス陶芸家の手でよみがえり、現在はアートとして知られるようになりました。
熔解したガラスを扱わないため、吹きガラスやトンボ玉など(ホットワーク)に比べて安全に制作出来ます。
ホットワークに対し、パート・ド・ヴェールやフュージングなど、熔けたガラスを扱わないものをコールドワークと言います。

作り方

  1. 粘土やワックスで原型を作ります。
  2. 耐火石膏で型取りして鋳型にします。
  3. 出来上がった鋳型にガラスの粉を詰めて、電気炉に入れて焼成、鋳造します。
    (800〜850℃)
  4. 焼成後急激に冷やすと、ガラスの外側と内側に温度差が生じて割れてしまいます。
  5. ガラス全体の温度が一定になってからまた下げるという様に、徐々に冷ましていきます(これを徐冷と言います)。
  6. 常温になったらガラスを型から取り出し、研磨して仕上げます。

特徴

パート・ド・ヴェールの場合、基本的には無色透明のガラス(スキと言います)と色のパウダーを調合して作ります。
色の濃淡やガラスの粒子の組み合わせによって、様々な表現が可能です。

パート・ド・ヴェール特有の気泡は、ガラスの粒子によって変わります。
粒同士が熔着してひとつのかたまりになる時に隙間が残り、それが気泡となり留まります。
粒度が細かくなる程、空気の泡も細かく多くなるので不透明に近くなります。
ですから、ガラスの粒が大きければ透明感が増し、細かくなるほど不透明に近くなります。

スキに対して色のパウダーの量が多ければ、発色は濃くなります。
また、同じ色でも厚みの違いによって濃淡が変わります。
これは光の透過によるものです。
また、表面はマットにするか、鏡面にするかなど、仕上げの段階でも表情はガラリと変わります。

上記の特徴を生かして、様々な表現が出来ます。
一つの塊の中に、さらに何種類もの塊や空間を表現することも可能ですし、仕上げひとつで、違った印象を持つ作品にもなります。

いかがでしたでしょうか?
機会がありましたら、ぜひみなさんもチャレンジしてみてください!
始めは思い通りにはいかなくても、きっとかけがえのない、あなただけのガラスが出来上がりますよ!

島崎 弥佳子

パート・ド・ヴェール技法を使った島崎弥佳子の作品は、以下でご覧いただけます。
島崎弥佳子の作品