今月の作家インタビュー:陶芸家 北川タケシ(KITAGAWA TAKESHI)さん

今月のインタビューは『工房ひとつぶの空』でもすっかりお馴染みの陶芸家、北川タケシさんです。
柔らかな雰囲気、静かな佇まいの作品は、傍らにあるだけで穏やかな気持ちになります。
そして、ご本人もまさに作品通りのお人柄。
緩やかに、かつ、しっかりと時間を積み重ねている、優しさと強さを感じます。

私にとって北川さんは、もう13年来の大切な友人でもあります。
今回インタビューするにあたり、岡崎(愛知)にある工房にお邪魔しました。
愛犬カルモちゃんと出迎えてくれた北川さんは、やっぱりナチュラルな感じ。
あらためてのお話は、新鮮な発見の連続でした。

教育大の総合造形コースを卒業されてますが、陶芸家になったきっかけは?

総合造形コースには5つの専攻があって、その中にガラスと陶芸があったんです。ガラスもやりたかったし、陶芸もやりたかったのですが、選んだのはガラスでした。
ガラスは授業のカリキュラム上、専攻していないと受けられなかったのです。
その代わりと言ってはなんですが、空き時間は陶芸室に入り浸っていました。
それこそ陶芸専攻の学生たちよりも長く(笑)。
そこに居れば、専攻でなくとも分け隔てなく教えてくれたんです。
ガラスに陶芸、とにかく毎日、大学が楽しくてしょうがなかったですね。
大学での時間が、もの作りのベースかな。
今でもガラスと陶芸、両方できたことは良かったと思っています。
コースが出来たばかり(1期生)だったので、前例が無かったんですね。
あの手探りな感じと、それに相反したコースのゆるさが心地よかった(笑)。
なので、自分としては現在『陶芸』をやっているというよりは、『表現する素材が土』と言った方が しっくりきます。

なるほど~。
では作品は、どんなふうに、どんなシーンで使って欲しいですか?

お好きに使っていただければ(笑)。
僕の作品は、洋服で言えばドレスではなく普段着のイメージなんです。
普段着って、意識して着てないですよね。
でも確実に身にまとっているし、何気なく選んでる。
そのくらい身近なものとして存在したいですね。
ちょっと頑張れば手を伸ばせて、生活の中に取り込めるくらいに。

制作するにあたって、そのパワーの源、原動力は?

器の制作について言えば、まず、器が好き。
その好きな器を作って、皆さんに使ってもらえる喜びが原動力かな。
自分の為より、人の為に作りたい。
そして、作ったものを通して人と出会って、コミュニケーションを取って。
社交的な方ではないので、社会とつながるツールとしての役割もあるかもしれません。
ですからリピーターに出会うと、とても嬉しいんです。

オブジェの場合は、作りたいものをこだわりなく作る、楽しく、ワクワクしながら!もの作りを始めたばかりの頃のことを思い出しながら…。
オブジェの制作は自分の楽しみ的要素もあって、あまり主張しないものを心がけています。

なんだか、穏やかな時の流れを感じますね。
制作スタイルと言うか、手法はどんな感じですか?

主に「手捻り(てびねり)」で制作しています。
スピードが自分に合っているんですね。
例えば、徒歩、自転車で言えばゆっくり漕いでいる感じです。
比べて言うと、ロクロはジェットコースター、かな。
あのスピード感は、たまに味わう程度で。

日々制作されていますが、好きな事や夢などありますか?

根が「ものぐさ」なので、休憩することが好き(笑)。
読みなれた漫画とかTVとか、目で追っているだけの、やっているようでやっていない時間が大切ですね。
案外そういう時に、無意識にいろいろ思いめぐらせている気がします。
なので、ドキュメンタリーとか、もの作りに関係するようなもの、意識が働いてしまうものはダメなんです(笑)。
どれだけ忙しい時でも、休憩時間は作るようにしています。

私も頭がパンパンになると、ぼ~っとTVを観たり、ひたすら新聞を読んだりするので、すごく分かります!

それから、種を植える事も楽しいですね。
陶土が少し余った時にちょこちょこっと植木鉢を作って、それに植えて楽しんでいます。

陶芸の他に刺繍もやっているんですけど、ミシンが使えるようになりたいですね。やはり、手を使って何かを作るのが好きみたいです。
面倒くさがり屋なんですけどね。

刺繍も制作されているんですね!

焼きものと違って、途中でどうこうなるって事が無いのがいいんです。
途中で割れたりしないし…安心感がある(笑)。
単純作業の部分とか、何も考えずに手を動かしたり。

もの作りの軸にしているコンセプトやテーマはありますか?

心地よいもの。
すべてに共通している思いは、生活の中で、存在していることさえ気付かないくらい馴染んでしまうものを作りたい、と言う事です。
目にして、手にして、心地良いということさえ忘れてしまうくらい 馴染み過ぎる感じのものを。
例えば、割れてしまったり、人に譲ったりして生活から無くなった時に、その存在に気付く、くらいに、自然に存在できるものを作りたいです。
決して存在感のないものを作りたいという訳ではないのですが(笑)・・・言葉にするのは難しいですね。

ちょっと脱線しますが、愛犬カルモちゃんの存在と…?

カルモは僕にとって、唯一無二のかけがいのない存在です。
居ても何一つ生活には支障をきたさない、でありながら、生活に無くてはならない存在。
『居る』とうことを意識しない、そのくらい自然な存在です。
作品のコンセプトと通じるところがあるかも知れませんね。

今後進みたい方向性などは?

今日をちゃんとやっていれば、つながっていくんじゃないかな、と思っています。紐作り(手捻りの一種)と同じような感覚です。
積み上げていけば、そこに何かが出来ていく…。
将来はこうしたい!という強い思いはなくて、今までの積み重ねが『今』であって、心地よい現状が出来上がったのでは、と。
なので、今のスタイルを続けていくこと、かな。
流されず、かと言って、意固地にならず。

北川さんにとって、ものを作るということは!

単に、楽しい。
嫌な事も、面倒な事も含めて楽しい。
特別な事ではなく、ことさら気負う事もなく、淡々と…。
日々暮らしていくように、ものも作っていけたらいいと思っています。

そんなスタンスの北川さんですが、陶芸教室で講師もなさってますね。

教えることを通じて、人とコミュニケーションを取る場が持てて良いですね。
そして生活のリズムも取れる(笑)。
何より教えるという行為によって、逆に教えられることの多さに驚いています。講師の仕事も、やはり社会とつながるツール、手段でもありますね。

最後になりますが、先日、個展『ぬくといコーヒー牛乳』(名古屋)が終了したばかりですね。今後の予定を教えてください。

今年最後は、岡崎(愛知)にある小野珈琲店にて、12月12~16日(14日休)に個展をします。
毎年12月にやらせていただいていて、今年で9回目になります。
とても素敵な佇まいの珈琲豆専門店ですよ。

北川さんから教えていただいて、私もすっかり小野珈琲店さんのファンです!
と言う事で、今月のプレゼントは北川さん特集にちなみまして、小野珈琲店さんのコーヒー豆です!!
美味しいコーヒーをいただきながら、あっという間の楽しいインタビューでした。
今日はありがとうございました!

こちらこそ。
ありがとうございました。