今月の作家インタビュー:ガラス作家 島崎弥佳子(SHIMAZAKI MIKAKO)

今回は、『工房ひとつぶの空』を運営しております私、島崎弥佳子(しまざきみかこ)についてお話させていただきます。
今年一年のご愛顧に感謝して、ご挨拶、自己紹介として書かせていただきます。
ぜひご一読くださいませ。

アートの始まり

両親とも美術が好きなので、画集を絵本のように見たり、アートに触れる機会が多かったように思います。その影響で、幼い頃から絵を描いたり、空想するのが好きでした。
絵がコンクールなどで選ばれたりすると、家族がとても喜んでくれたんです。
それで、一生懸命絵を描くと喜んでくれるんだな、嬉しいな〜、と。

兄がいたからでしょうか、男性に生まれたかったし、そうでなかったことが悔しかったんです。ですから、当然のように男勝りで、お転婆。
現在は歳を重ね、何よりも大切な息子を授かったことで、女性で良かったと納得、満足していますが、当時はとにかく男性に負けたくなかった。男性と対等で能力勝負、且つ自分らしい仕事は何か…そうだ、デザイナーだ!となった訳です。
そこで、愛知県立芸術大学デザイン科に進みました。アートへの情熱というよりは野心剥き出しの、ロマンの無いスタートです…。

ガラス作家への道

勇んで大学へ入学し、様々なデザインを勉強していくのですが、何か落ち着かない。形を洗練させていくこととか、フォルムの追求、とかが、自分には窮屈になってきて。繊細な作業が苦手というか、どうにも煮詰めきれない(笑)。四年生のある日、図書館でアール・デコやアール・ヌーボォー時代のガラス作品を見て、これだ!と。その時代が洗練されていないという訳ではく、デコラティブ(装飾)って美しいし面白い、と開眼して。同時に、ガラスは透明感や伸びやかさが素敵だな、と、ガラスの素材自体にも憧れを持ちました。
ちょうど、友人が吹きガラス作家さんと知り合いになったというので紹介してもらい、即、教室に通い始めました。4、5箇所掛け持ちして得たバイト代をすべて吹きガラスに費やし、卒業制作も吹きガラスを使ったインスタレーションを制作しました。ですが、デザインの勉強は4年していても、ガラスは1年足らずでしたので、このまま卒業して何が出来るのか…。もっとガラスを学びたいと思っていた矢先、創立4年目の富山ガラス造形研究所の存在を知りました。
そこで、卒業(制作チェック)が決まったその足で電車に乗り、富山ガラス造形研究所の試験に向かい、受験、合格、移住となったのです。

ガラス造形研究所では、二年間でガラスに関する技法をほぼひと通り学びました。吹きガラスにステンドグラス、バーナーワーク、キルンワーク、切り子などなど。キルンワークの中にパート・ド・ヴェール技法があって、またまたこれだ!と。吹きガラス作家を志して入学したのですが、パート・ド・ヴェールの制作ペースが自分に合っているのと、色合いがとても心地良かったので、また進路変更(笑)。
寝ても覚めてもガラス漬けの毎日でしたが、とても充実していました。

大学と研究所の計6年間、目まぐるしく軌道修正しながら邁進していた感じですが、どの勉強も今に役立っていると思います。
研究所卒業後は福岡へ移住し、こじんまりと『工房ひとつぶの空』を構え、早いもので12年が経ち、現在に至っています。

制作への原動力

何より『大切な人達がいる』ということですね。
幼い頃の出発点である、両親が喜んでくれたら自分も嬉しい、あの感覚です。
それが大人になって、少しばかり規模が大きくなっただけのような気がしています。色んな場所で学んだり生活したりしていると、素敵な出会いがたくさんあって、大切な人達が増えていきます。日々、その人達への感謝の気持ち、喜ばせたい、時には励ましたいといった思いで、ガラスに向き合っていることが多い。ですから、プレゼントを作る時などは俄然力が入るし、何より作っていて楽しいですね。
展示会をする時も、わざわざ足を運んで見に来て下さる方々や、企画して下さったギャラリーのオーナーさんの事を思い浮かべながら制作すると、スムーズなんです。どんな作品が並んでいたら幸せな気持ちになってもらえるか、そこに重きを置いて作っています。

好きな事、物

空想、新聞を読む事、読書、映画鑑賞、布、コーヒー、チョコレート。
手芸屋さん巡り、本屋さん巡り、図書館。
自分の知らない世界を知ることが出来るもの。

著名な方の伝記や、インタビュー記事を読むのが面白いです。
どのようにしてその人の今があるのか、という事にとても興味があります。

コーヒーとチョコレートはセットで、制作時には欠かせません。
チョコレートは普段あまり食べませんが、制作に入ると、突然無くてはならない存在になります。
自分でも不思議なくらい、良いのかなぁ…と思うくらいよく食べます。

軸にしているコンセプトやテーマ

アートについては色々な考え方があると思いますが、個人的には、プラスの感動や喜びを表現していきたいです。
例えば、悲しみや憎しみがテーマの根底にあるとしても、それをそのまま形にするのではなく、再生していく過程や、濾過した後の姿として表現したいという思いがあります。ドロドロせず、かといって軽い感じでもなく。
見たり使ったりした人の心が映って完成するような、後味の良い作品を作りたいですね。作品、タイトル、見る人、の三角形が出来て、その真ん中に何かが生まれるものを目指しています。ですから、タイトルも直接的なものは付けないように、入り込む余地のあるものを。

今後進みたい方向性、挑戦したいこと

ガラスに限らず、身近にアートがあることで『楽しいな』と思ってもらえる環境を作りたいですね。作家さん達が流動的に交わって、活動して、静かにムーブメントが起こるような、何か。
まだまだ模索中ですが、ネットショップもこれらの一部分という意識でやっています。

ものを作るということは

私にとって、ものを作るということは、感謝の表現、です。心の均整を取る為に必要なものでもあるので、自己浄化、でもありますね。自分の中から溢れてくるものを形にして、次に進む、みたいな感じです。

2009年の予定

6月1〜7日、佐賀県佐賀市の『ギャラリーふじやま』で協賛として出品させていただきます。
又、8月14〜30日、愛知県名古屋市の『ギャラリーAPA』で個展をさせていただきます。特にギャラリーAPAでの個展はとても楽しみで、すごく気合いが入っています!

最後までお読みいただきありがとうございました。これからも皆様に楽しんでいただける作品作り、ショップ作りに励んでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます!

工房ひとつぶの空 店主
島崎 弥佳子